能面造形上の最高傑作と言い得るものでしょう。怒りの象徴として、額には二本の角が生え、眼は大きく見開かれ、白眼の部分まで含めて金冠で覆われています。その眉間はしかめられ、庇状に眼に覆い被さっています。歯も金冠及び金泥で、しかも上下に牙があり、口は耳で裂けています。凄まじい形相です。
しかし、よく見ると怒りの表情だけでなく、その反対の悲しみ・怨みの表情が見えます。まったく正反対の筋肉の動きをするはずの表情が一 つの面の上に一緒に彫られているのです。ですから、見る角度によって怒りの表情が強され、また、別の角度からは怨み・悲しみの表情が浮かび出るようになっているのです。
類面に、より上品な「白般若」、より怒りの強調された「赤般若」があります。